ムーヴ思考 ~橋本左内「啓発録」より~

橋本左内は、激動の時代であった幕末に、福井県で活躍した人です。大変優秀 な人物で将来を期待されていましたが、安政の大獄により、二十六歳という若さ で命を落としてしまいます。左内は小さい頃、自分のことを、「何をしてもおろ そかで、注意が行き届かず、しかも弱々しくてぬるい性格であり、全く進歩がな い。このままでは国や藩のために役に立つ人間にはなれない。」と客観的に分析 していました。 そして、そのような自分を深く恥じ、立派な大人になるための心得として、十 五歳の時に「啓発録」という文章を書き上げています。「啓発録」には、以下の 五つの項目が記されています。

 

 

一、「稚心を去る」:自分とその運命を変えようと思うなら、結局、自分の手で何とかする以外に方法はない。その第一歩は「稚心」、つまり「子供っぽい心」を捨て去ることである。

二、「気を振う」:負けてたまるか、くじけてなるものかという負けじ魂こそがふる人を変えるエネルギーになる。常にそうした心を持ち、緊張をゆるめず油断のないようにしなければいけない。

三、「志を立てる」:夢や目標を持て。自分の心の向かうところをしっかりと決め、一度決心したからには、その方向を目指して絶えず努力するべきである。

四、「学を勉める」:学問を学ぶことは大切である。そして、それを世の中のたつとめに正しく生かすこともまた大切である。

五、「交友を択ぶ」:互いに切磋琢磨できる良き友を選ぶこと。自分を高めてくえられ、心から尊敬でき、何かあった時に、真剣に心配してくれる友達こそ、何よりも大切にするべきである。

 

左内は、十五歳という人生の節目に立てたこの誓いを守り、26歳という短い人生ながらも素晴らしい人材として、教育や政治に大きな成果を残しました。これら五つの項目は、現代の私たちにもそのまま当てはまるものであり、私の気持ちを奮い立たせてくれます。