思い込みは、刷り込みや環境、癖などが要因としてある。
「自分には限界がある」「どうせできるわけがない」――あなたは、ネガティブな思い込みによって自分自身を呪縛してはいないだろうか。
困難にぶつかったときに周囲の人にからかわれたり、レッテルを貼られたり、「そんなことはあなたには無理だ」などの否定的なメッセージを受け取り続けたりしていると、いつの間にかそれが固定観念となり、その人の心に棲みついてしまう。
それは誤った思い込みにすぎないものだ。しかし、自分の頭の中に閉じ込められてしまうと、難なくできるはずだったことも、能力を十分発揮しきれずに終わるという事態に陥ってしまう。
「なぜ自分はうまくいかないのか」という悩みや、「こんな状況は自分にふさわしくない」という現実逃避にさいなまれた経験のある人も少なくないだろう。そして、目標から遠ざかり、人生そのものに影響が及んでゆく。このようなやっかいな固定観念を、どう打ち破ればよいのか?
プロスポーツ選手や起業家まで多くの人々を脳コーチングしてきた世界的エキスパート、ジム・クウィック氏は、幼少期に負った脳損傷により学習困難に悩まされ、「脳の壊れた子」と呼ばれるなど、いじめを受けながら育った。
やがて、できないことと直面すると「僕はバカだ」「脳が壊れているからだ」と内なる声を発して自分自身を言い聞かせるようになっていき、それが自己を制限する固定観念となってしまったという。
だが、大所帯でレストランを訪れたある日、クウィック氏は大変な衝撃を受ける。注文をとりにきたウェートレスは、なんのメモも取らずに25人分の注文や、複雑な調理の希望などを聞いていた。「どうせ間違えるはずだ」と思いきや、なんと、ミスなくすべて正しく配膳するという「離れ技」をやってのけたのである。
ネガティブな固定観念で他人を見ていたことに気がついたクウィック氏は、自分自身に対しても、自己の脳のキャパシティーを実際よりも低く見積もっていたのではないかと立ち返ることになる。
この種の固定観念は「氷山の思い込み」とも呼ばれている。根深く強固で、その人の感情の燃料となっており、氷山ががっちりしていればしているほど、人生は思うようにいかなくなる。
だが、この氷山をうまく溶かしてしまえば、感情や人生を制御できる総量が飛躍的に増える。つまり、氷山の奥には、なんらかの発揮できるはずの能力が存在しているということだ。悪しき固定観念を最小限に抑えて、自分の能力を自由に解放するためのマインドセットを育てるには、どうすればよいのか。クウィック氏は、まずは「固定観念の存在に気づくこと」だという。
自分はダメだという内なる声が聞こえてきたら、それに注目し、声の出どころを探ってみよう。多くは子ども時代の社会環境が源であることが多いという。
内なる声が自分をどう制限しているかを知り、見極めると、それはあくまでも「意見」であって「事実」ではないとわかり、心は軽くなるだろう。すると、その声に反論することもできる。
第2に「根拠を確かめること」。たとえば、自分は“本当に”人前で話すことが苦手なのか、裏付けはあるのか。過去の経験は、100%ダメで何の手ごたえもなかったのか。よくよく考えると、実はそんな事実はなく、固定観念の出どころは、現実に根差したものでもないことが多いという。
さらに、自分が能力を発揮できないと感じたとき、その原因がどの程度「内なる声に惑わされること」に起因しているのかを分析しよう。人は、自分のしていることに自信を持てないと、内なる声が騒がしくなり、集中力を欠いてしまう。そして、実力を発揮できなくなるのだ。ここを知ることが、固定観念と闘うために重要だ。
第3に「新しい信念を作ること」。自分を内観して分析できると、「人前で100%うまく話せる人などいない」というネガティブな思考が、「プレッシャーが最高潮の状態で、何度かいいプレゼンができたことは誇っていい」というポジティブな思考に変わってくる。
自分を制限してきたのは、実は現実とは乖離したネガティブなキャラクターからの声でもある。実際の自分とは区別して、現実へ踏み出す。それが、リミットレスへの第一歩だ。