ムーヴ思考 ~メタ認知~

「どうして自分はあの時、あんな行動をしてしまったんだろう?」と思ったことはありませんか?

しっかりと考えて行動したはずなのに、期待していた結果と違う。

冷静に自分自身を俯瞰していたはずなのに、相手を無意識で傷つけていた。

このような状況を経験したことがある方は「メタ認知」を理解すると助けになるかもしれません。

ビジネスや教育の中で「メタ認知」を身につけることの重要性が注目されています。

メタ認知」(Metacognition)とは、自分が認知していることを客観的に把握し、制御すること、つまり「自分が物事を認知している状態を、客観的に認知している状態」

 

ジョン・H・フラベルというアメリカの心理学者が定義した概念で、元々は認知心理学者で使われていた用語だったため、つい最近まで一般的に知られていない言葉でした。

メタ認知の「メタ」とは、「高次の」という意味があります。従って自分が「認知している」こと、たとえば記憶や思考、学習したことなどを、「高次の」(=メタ)視点から認知しよう、というのが「メタ認知」の直接的な意味になります。

 

「メタ認知」の概念の起源に遡ると、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの言った、

「彼らは何も知らないのに知っていると思い込んでいるが、私は何も知らないということを知っている」に辿り着きます。

「無知の知」知らないことを知ることに一番価値があるという思想です。

「メタ認知」をうまく活用することで、自分自身を冷静に見られるようになり、高い目標の設定やそれを達成する力、問題解決能力などを引き上げることができる。

メタ認知には「メタ認知的知識」と「メタ認知的技能」の2種類があり、それぞれ次のようなものです。

【メタ認知的知識

①自身の「短所・長所」を客観的に認知している知識のことです。例えば、「大勢の人の前で話す際に緊張してしまうが、1対1であれば、冷静に話すことができる」ということ自体を把握し、知識として理解をしている状態を表します。

 

②しかし、自分自身を認知した上での知識だけでは、メタ認知能力が高いとは言えません。さらに一歩踏み込むためには、認知的知識をもとに、自分の「短所」・不得意とする領域への対処法までを把握できているかが重要となります。そこでカギとなるのが、次の「メタ認知的技能」です。

【メタ認知的技能

メタ認知的知識を把握した上で、現在の自分自身の状態を客観的に確認、もしくは対策を講じる能力のことを指します。「メタ認知的技法」の中には「モニタリング」と「コントロール」という2つの能力が含まれます。

①メタ認知的モニタリング:メタ認知的知識を現在の自分の状態と照らし合わせ、客観的評価を行える能力

 

②メタ認知的コントロール:モニタリングで確認できたことを踏まえて感情をコントロールし、改善に向けて行動を変える能力

実は「メタ認知能力」を鍛えることで、自分の欠点をポジティブに解釈することができるようになるという効用もあります。自己改善や自己成長に向けて、前向きに物事を受け止めることができ、様々なシーンで自分自身を冷静に俯瞰することが可能になるためです。

ネガティブなことが起こった際に、メタ認知能力が低いと「なんで、自分はいつも失敗ばかりするんだ。もう自分には価値がないかもしれない」と、さらにネガティブな考えに陥りがちです。、一方でメタ認知能力が高い人は、1つ高次の視点から事象を俯瞰することができるので「自分は失敗すると、ネガティブな感情になるな。きっとそれは、責任感があるということだし、今回の失敗要因は分かっているから、次からはこういう風にしてみよう!」と前向きに物事を捉えることができます。

スタンフォード大学名誉心理学教授のアルバート・バンデューラは、メタ認知能力の欠如などにより、ネガティブな感情に囚われると、新しいことを学ぶ能力がたちまち損なわれる恐れがあると発表しています。

「メタ認知能力」を鍛えることで、今まではネガティブに考え結果自己嫌悪に陥っていた自分から、【自己成長】に繋がるチャンスとして捉えることができるようにもなります。

 

有効なトレーニングを一つ紹介します。

セルフモニタリング

自分が意識せずに行なっている思考や行動に対する「気づき」を自身で得るトレーニングのことです。

  • 今の状況:「上司に怒られた」
  • 思考:今まで怒られたことがなかったのに、初めて怒られて混乱している
  • 気分:悲しい・驚いている                 
  • 行動:自販機からコーヒーを買っている 
  • 体の反応:冷や汗をかいている        

セルフモニタリングをすることで、自分自身を冷静に客観視することができ、日々の行動を変えることも可能になります。

 

今後ますます求められる「メタ認知能力」。今後さらに「複雑で不確実な社会」に突入していくVUCA時代を我々はどのように生きていくかのヒントの1つになるのではないでしょうか。