オンライン授業の普及で教育格差が解消すれば、スタートラインが揃います。しかしながら、スタートラインが揃えばゴールも揃うというわけではありません。実力に沿った平等な競争が繰り広げられるということです。
ただ、これからの時代は、一番でゴールテープを切ることだけが勝利ではなく、その子に最適なレース展開にすることこそが求められます。そうした意味でも、オンライン授業は秀でています。個々人の状況に合わせて、スケジュールが組めるからです。
実力が異なる大人数を相手に、対面で板書しながら進めている従来のやり方では、「わからない子ども」も「できる子ども」も我慢を強いられます。わからない子どもが質問している時間は、できる子どもにとってムダです。
できる子どもが発言している内容は、わからない子どもにはチンプンカンプンです。
それに、学校によっては、授業を邪魔するような困った子どももいます。そうした中で、一人ひとりのニーズに沿った教育をしていくことは不可能です。
私は、日本に「飛び級制度」がないことが、優秀な子どもたちの成長を妨げていると思ってきましたが、マイペースで学べるオンライン授業なら、飛び級に近い学び方もできるでしょう。もちろん、躓つまずいている子どもにも大きなプラスがあります。
たとえば、小学校の算数で二桁の掛け算が解けなくなっている子どもは、一桁の掛け算に戻ってやり直すことが必須です。しかし、大人数を相手にする対面授業では、三桁の掛け算や割り算に進まなくてはなりません。すると、「もうまったくわからない」という状態になります。
こうして、まったくわからない授業を聞いていることが、その子を徹底的な勉強嫌いにしてしまいます。
その点、オンライン授業なら、周囲からバカにされたりからかわれたりすることもなく、何度でも納得いくまで繰り返し学べます。そして、その子なりに「わかった」という小さな成功体験を積み重ねることができるのです。本来、教育というのは「分からないもの」を「分かる」ようにするのが本質なのですから。